2021/12/24
【アーカイブリンク有】『ムーミン谷の彗星』読書会レポート(新ノベルティ完成記念インスタライブ)

ムーミン公式ファンクラブの新しいノベルティ『「ムーミン谷の彗星」スニフのわくわくランチーフ&ヘムルの変身風呂敷』が完成したことを記念して本ノベルティのデザインの元となった小説『ムーミン谷の彗星』の読書会をインスタライブで開催いたしました。その模様を一部こちらでレポートいたします。
最後にInstagramでのアーカイブリンクをお付けしていますので見逃した方はぜひ動画でご覧くださいね。
スタジオ内は彗星が迫るムーミン谷をイメージしたライティング……!

当日はファシリテーターとして、講談社のムーミン担当であり児童書編集者の磯村花世さんと、ゲストとして翻訳者であり、ムーミン全集【新版】の翻訳編集をご担当された畑中麻紀さんをお招きしました!
“ムーミン全集【新版】1”の『ムーミン谷の彗星』は、【1】というナンバーの通り、「ムーミン全集」のはじめの一歩。このお話で、ムーミンはスナフキンやスノークのおじょうさんと初めて出会います。

全体のストーリーを追う前に、小説『小さなトロールと大きな洪水』『ムーミン谷の彗星』が執筆された背景のお話から。
それまではパリに留学するなど、画家として有望だったトーベですが、当時はソ連がフィンランドに侵攻。トーベは色彩豊かな絵が描けなくなり、空襲におびえながら、物語を書き始めました。『ムーミン谷の彗星』に出てくるさまざまな自然災害はその不安を表しているのではないかといわれています。
『ムーミン谷の彗星』が初めて書かれたのが1946年、タイトルは『彗星を追って』というものでした。
その後、1956年と1968年、挿し絵も含め大幅に改稿し、現在の『ムーミン谷の彗星』を完成させました。

実はノベルティのデザインにも入っているスニフのお気に入りの「子ネコ」が改稿前は登場しておらず、その代わりに出ていたのが「キヌザル」だったのだとか。トーベのお父さんが実際に飼っていたサルをモデルにしていたのではないかとも言われているそうです。
(実は現在も英語版の『ムーミン谷の彗星』は1946年版のままなのよね、なんてトリビアなお話も。)
お話の中でさまざまな危機にも面するムーミンたちですが、あくまでマイペース。「ダンスを踊っちゃったりして呑気」だし、「ヘムレンさんは全然慌てていないしね」なんてお話をしながらストーリーをざっとおさらいした後、今回の読書会のテーマへ
テーマは『「ムーミン谷の彗星」に出てくるおいしそうな食べ物』です。
ムーミンママは、流し台のそばに置いてあったバスケットに、サンドイッチをつめこみました。そして、缶からキャンディをひとつかみと、べつのかごからりんごを二つ取り出しました。昨日の残りの小さなソーセージも四つ入れます。それから、いつでも飲めるように、まぜあわせてたなの上にのせてあったジュースを一びん、持ってきてくれました
-ムーミン全集【新版】1『ムーミン谷の彗星』講談社刊

ムーミンママがバスケットに詰めてくれた「キャンディ」の部分はスウェーデン語で「karamell」。この単語はムーミン全集の中でも物語によっては「キャラメル」となっていて、そのイメージが残っている方も多いと思います。
新版『ムーミン谷の彗星』の初版では「キャラメル」としたのですが、新版全集の改訂が進んでいくにつれ、ここは「キャンディ」であることがはっきりしたとのこと。
そして、ムーミンママが持たせてくれた「まぜあわせてたなの上にのせてあったジュース」とはどんなものなのでしょうか。何か2つのジュースを混ぜた?粉を溶いたもの?色々と想像してしまいますが、これは夏の間に収穫したベリーなどの果物を煮詰めてシロップにしたものを保管しておき、それを水などで割って飲む習慣があり、それを指しているのではないかとのことでした。
どんな味がするのかな?
ここでムーミンたちが焼いている「パンケーキ」はどんなもの?というお話も。

『ムーミン谷の彗星』のこの場面に出てくるパンケーキは、スタジオに用意した上の画像のような大きなパンケーキではなく、複数の丸いへこみのあるフライパンで焼く、1枚1枚が薄くて小さいパンケーキなんだそう。

スウェーデンでは“Plättar”プレッタルと言われており、ベーキングパウダー&砂糖が入っていない素朴な味。季節のベリーやジャムにホイップクリームを乗せたり、ソーセージやハム、スープと共によく食べられているそうです。
そこで三人は火をおこして小さなパンケーキを作り、焼けたそばから食べていきました。これが、パンケーキの正しい食べ方なのですよ。
-ムーミン全集【新版】1『ムーミン谷の彗星』講談社刊
この場面の描写は「実際トーベもそう思いながら食べていたのではないか」「トーベらしいね」と言われているそうですよ。
これも食べてみたいですね。それも焼けたそばから!
たのしんでらっしゃいね。日曜日までに帰ってくるのよ。こけももクリームのおいしいケーキをつくっておくわ。寒くなったら、わすれないでウールのズボンをはくのよ。おなかの薬は、リュックの左ポケットに……ムーミンママも、大声をあげました。
-ムーミン全集【新版】1『ムーミン谷の彗星』講談社刊
「コケモモクリームのおいしいケーキ」……まさにムーミンのお話の食べ物と感じてしまう食べ物ですが、具体的にはどんなもの?
実はケーキというよりはホイップクリームにベリーのジャム(主にコケモモ)を混ぜたデザートなのだそう。(スポンジケーキの切れ端を敷いて、トライフルのようにすることもあるとか)

ムーミンママは台所のテーブルにすわって、ピンク色のクリームでケーキをかざりつけていました。ケーキには「かわいいムーミントロールへ」とチョコレートで書いてあり、てっぺんにはお砂糖の星がのっかっていました。
-ムーミン全集【新版】1『ムーミン谷の彗星』講談社刊
こちらのケーキは、原書では“Krokan”クローカンといいます。そう聞くと、小さなシュークリームを積み上げた「クロカンブッシュ」が思い浮かびますが、これは、一般的にはアーモンド粉の焼き菓子で作ったパーツをタワーのように積み上げて、マジパン細工などで飾りつけたものです。
そして「ピンク色のクリーム」は旅に出る前のムーミンたちを送り出した時にムーミンママが約束した先述の「コケモモクリーム」なのではないかとのこと。
ムーミンたちが帰ってくるのを待つうちに、「コケモモクリームのケーキ」ではなくウェディングケーキのような大きなケーキに仕上げてしまったムーミンママ。
「素敵な場面ですね!」という畑中さんに対して「でも、ムーミン谷のみんなが彗星から避難していて、もうだれも残っていないよという状況でこれをつくるムーミンママって……すごいなと思う」という磯村さんのご指摘も。笑
この後のケーキの運命も含め、やっぱりちょっととぼけたキャラクターたち。ムーミン谷のお話は最高に面白いですね!

他にも
ムーミンに初めて出会った時、「コーヒーを持っていないか?」と声をかけたスナフキン。苦情を言いに来たじゃこうねずみさんとムーミンパパたちが乾杯したりんご酒(ムーミンたちはミルク!)、スニフが売店で買った赤いレモネード……などなど翻訳の裏話などもおうかがいしながら『ムーミン谷の彗星』にはこんなにたくさんの食べ物が出てくるのだなあと改めて振り返ることが出来ました。
そのほか、キャラクターの魅力のお話や、スナフキンのおなじみの名言など盛りだくさんのお話をお聞きしましたが、今回のノベルティとなった風呂敷の挿絵は、『ムーミン谷の彗星』に出てくるキャラクターが集合している良い絵ですねという話題に。
おびえているのはスニフだけで、ちょっとキョトンとしたムーミンたちの表情、確かにかわいい!

今回のインスタライブは以下のページからアーカイブをご覧いただくことが出来ます。
アニメーションや絵本、コミックスと多くの形でリリースされている『ムーミン谷の彗星』ですが、小説はまだ読んだことがないという方も、何度も読んでいるという方も興味深くご覧いただけることと思います。
磯村さん、畑中さん、リアルタイムでご視聴いただいたみなさま、ありがとうございました!
新しいノベルティ『「ムーミン谷の彗星」わくわくスニフのランチーフ&ヘムルの変身風呂敷』について